細胞周期制御機構に関与するユビキチン-プロテアソーム・システムの役割を解析し、以下の成果を得た。1.出芽酵母細胞周期温度感受性nin1変異株を非許容温度(37゚C)で培養し、マルチユビキチン化蛋白質が蓄積した酵母を破砕し、遠心分離で得られた抽出液を出発材料に用いてSuperose6ゲル濾過、FK2抗体-アガロースクロマトグラフィーおよびMono-Q FPLCを行い、マルチユビキチン化蛋白質を単離した。それをリシルエンドペプチダーゼで消化し、消化物を逆相HPLCで分離し、得られた分解フラグメントのアミノ酸配列を決定した。ホモロジー検索を行い、ポーリンなどの蛋白質がユビキチン化されている可能性を明らかにした。2.アフリカツメガエル卵細胞周期無細胞系を用いて、プロテアソームインヒビター存在下で細胞周期の進行が遅れ、マルチユビキチン化蛋白質が蓄積することを明らかにした。蓄積するマルチユビキチン化蛋白質を上記1と同様な方法で単離した。3.HeLa細胞の熱ショック処理に伴って高分子量マルチユビキチン化蛋白質がサイトソル内に蓄積し、核内のユビキチン化ヒストンH2Aのレベルが減少すること、一方、熱処理後に通常温度に戻して培養すると前者が減少し、後者が増加することを明らかにした。4.各種疾患患者の血清中のマルチユビキチン鎖を定量し、関節リューマチなどの疾患患者の血清中のマルチユビキチン鎖量が健常人に比べて高いことを見いだし、血清中のマルチユビキチン鎖の定量による臨床診断の可能性を提起した。5.出芽酵母26SプロテアソームサブユニットであるSEN3、NAS1およびSUN2の温度感受性変異株を非許容温度(37゚C)で培養すると、マルチユビキチン化蛋白質が蓄積することを見いだし、それらのサブユニットが26Sプロテアソームによるマルチユビキチン化蛋白質の分解に必須であることを明らかにした。
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