CDKインヒビターp27^<Kip1>は哺乳動物細胞の増殖制御に本質的な役割を果す。Kip1遺伝子の変異はヒトの腫瘍において稀であるが、そのタンパクの発現レベルの低さは癌の悪性度、つまり、患者の術後の生存率の低さとよく対応している。このことは、p27^<Kip1>を制御する機構の変異が発がんの原因のひとつとなっていることを示している。細胞内におけるp27^<Kip1>の発現レベルは翻訳レベルあるいは多様な翻訳後の制御機構により調節されている。翻訳後制御にはcyclinE/cdk2複合体によるリン酸化、ユビキチン/プロテアソーム系による分解、未同定Myc標的遺伝子産物・cyclin D/cdk4複合体・ウイルスE1Aタンパクによる中和が含まれる。本研究では、p38^<-Jab1>がp27^<Kip1>と特異的に直接相互作用することを明らかにした。次に、p38の過剰発現はp27^<Kip1>を特異的に細胞質へ移動させ不安定化し、p27^<Kip1>の発現レベルを減少させることを示した。さらに、p38の構成的発現はp27^<Kip1>によるG1期停止を部分的に解除し、細胞の増殖因子要求性を低下させることを明らかにした。以上のことは、p38はp27^<Kip1>を負に制御する因子であることを示している。
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