研究概要 |
発生生物学の研究にニワトリ胚は非常に重要な実験系である。特に,四肢の形態形成においては重要な発見はニワトリ胚を用いた研究から得られている。ニワトリ胚において,レトロウイルスを用いた遺伝子発現系が開発され,特にRCASを用いた系は非常に有用な系である。しかし,挿入できるcDNAの大きさが2kb以下であることから,長いcDNAを発現できない欠点がある。前年度の結果から,レトロウイルスを用いる方法は効率が良くないので,今年度は電気穿孔法による遺伝子導入を試した.ニワトリの卵の中の胚に,直接DNAを注射し,そこに細い電極を用いて,電気パルスを加えることにより,遺伝子導入を試みた.マーカー遺伝子として,EGFP遺伝子を用いた.その結果,間葉の細胞には導入効率が落ちるが,神経細胞にはよい効率で遺伝子が導入されることがわかった.一方,RCASを用いたニワトリ四肢の形態形成の研究は,新しい線維芽細胞増殖因子(FGF)であるFGF10が,肢を誘導する間葉の因子であることを示す事ができた.さらに,FGF10は上皮細胞にFGF8を誘導し,肢芽の形成に関与し,両者は上皮-間葉相互作用により,肢芽の伸長を促進することがわかった.また,翼と脚の間に形成された過剰肢の特徴を調べるために,ニワトリのTbx4とTbx5cDNAをクローニングし,Tbx4が脚に,Tbx5が翼に特異的に発現することがわかった.そのマーカー遺伝子を使用して,過剰肢を調べたところ,それは翼と脚のキメラであることを発見した.
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