始原生殖細胞は生殖巣原基体細胞と相互作用を行いながら雌雄生殖細胞へ分化する。そこで生殖細胞を体細胞と組み合わせて、共培養や再凝集塊培養を行うことによって細胞間相互作用を行なわせる方法について研究した。すなわち11日齢までの胎子の性判別法、生殖細胞を抗体-磁気ビーズ法により単離する方法、生殖細胞を蛍光色素により生体ラベルする方法、生殖細胞と体細胞との凝集塊を作成する方法、減数分裂期の細胞を抗体によって検出する方法を改良した。これらの結果培養下で減数分裂に入る、つまり卵母細胞へと分化する生殖細胞を検出することに成功した。一方、13.5日齢胎仔雌雄生殖巣間での遺伝子発現の差を指標に性分化に関与する新規遺伝子、機能分子の単離を行った結果、これまでに新規遺伝子を多数同定した。これらの中でも新規な転写因子、nephgonadinについてさらに解析を進め、その時間的、空間的な発現パターン等を詳細に調べた。nephgonadinの発現は、生殖巣においては13.5日胎仔雄生殖巣で非常に強い発現が認められるのに対して雌生殖巣では発現が弱く、このような発現パターンは18.5日齢胎仔まで継続した。精巣では出生後発現量が時間を経過するに従って減少し、5週齢精巣ではかろうじて発現を検出できるレベルになった。これとは対照的に、卵巣での発現は出生後1週から2週目にかけて胎児期と同様に弱い発現が続いたが、2週目から3週目にかけて発現量が増加し4週目にその発現のピークを迎えることが明らかとなった。すなわち、精巣と卵巣での発現量は、生後2週目から3週目にかけて逆転することが観察された。このようにnephgonadinは、性依存的な発現パターンを示し、雌雄性分化、生殖巣形成において機能分子として働いている可能性が大きい。
|