神経系における主要な抑制性神経伝達物質であるγアミノ酪酸(GABA)の受容体はA型とB型2種類のサブタイプに分類される。このうち、B型受容体に関しては、その分子構造や機能持性が不明なため、的確な作動薬や拮抗薬の開発が妨げられている。本研究の初年度においては、精製B型GABA受容体蛋白およびそれに対するモノクローナル抗体を用いて、ラット脳におけるB型受容体のcDNAクローニングに着手した。この実験はほぼ成功し、これまで6種類のクローンを得ることができた。その部分配列を解析したところ、ほとんどは全く新しい分子構造であったが、例外的に1つのクローンは嗅覚受容体として知られている物質と薬50%のホモロジーが認められた。しかし、嗅覚受容体がラット脳に存在するという報告はなく、やはり新規の受容体分子を構成するものと思われた。さらに重要な事実として、得られた6種の核酸配列は全てグアニジン蛋白(G蛋白)受容体に共通する配列をもつことが挙げられる。これら6種全てのクローンについて全配列の決定実験を3'RACE法を用いてさらに検討中である。 もう一つの研究課題は、B型受容体の神経組織における分布様式を免疫組織化学で明らかにすることであるが、これに関しては、成熟および幼若ラットの脳内分布を調べ論文公表し、さらに腸管神経系における分布も国際シンポジウムで発表した。脳内分布については、A型受容体との相補的機能がしばしば認められた。 将来の課題として、得られたクローンに基づきタンパク発現させ、受容体機能を確認する必要がある。なお、本研究の遂行期間中に、B型受容体の配列の一つがネイチャー誌に報告されたが、未だ生理機能を確認した論文はなく、本研究で見出したタンパクとの共通性はないものと考えられた。
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