研究概要 |
皮質構造が特異的に異常になるミュータントマウスリーラーを使って,リーラーでは欠損し,正常マウスには存在する(allogeneic)分子を認識するモノクローナル抗体CR-50を分取してきた.今回,この抗体がリーラーの原因遺伝子(reelin)の翻訳産物(Reelin,以下リーリン)を認識すること,ならびに皮質構築におけるリーリン分子の役割についていくつかの成果を得た. (1)CR-50抗原分子の同定:これまでWestern blot等によって,抗原分子を検索してきたが成功しなかった.今回,Curranらと共同実験し,immunoprecipitation等によって,CR-50はリーリンのN末を認識することを明らかにした. (2)大脳皮質の構築:大脳皮質の構築が,preplateと呼ばれる皮質に最初に現われる一過性のニューロン層と,これより遅れて発生するcortical plateの間に成立している細胞-細胞間相互作用に依存することを明らかにしてきた.この細胞間相互作用が,preplateの構成員であるCajal-Retzius細胞に特異的に,しかも生きた状態ではその細胞表面上に,発現されるリーリンによって,制御されていることを明らかにした.従来,皮質ニューロンはradial glial fiberを足掛りとして移動し定着するものと考えられてきた.本研究は,radial glial fiberとは独立して,皮質ニューロン間の相互作用が,皮質層形成に基本的に重要であることをはじめて示した.また,リーリンは海馬-大脳皮質間の神経結合に必須の分子であることも明らかにした. (3)小脳皮質の構築:小脳のpurkinje細胞は,分子層と顆粒細胞層の境界部に整然と1列に並んで形成される.このpurkinje細胞層の形成が,顆粒細胞の細胞表面に一過性に発現されるリーリンによって制御されていることを明らかにした.
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