研究概要 |
神経突起の形成には微小管の増量と同時に安定化が必須である。我々は最近、ビデオ増強微分干渉顕微鏡(VEC-DIC)を用いて突起内微小管の安定性を直接観察する方法を確立した。本研究は、この新しい光学的方法を利用して、微小管安定化の機構を解明することを目的としている。初年度はまづ、外液中でも30分以上残存する安定型微小管が突起成熟に伴って出現することを確認した。本年度は、レーザー光を照射して外液中に露出した微小管を切断し、その脱重合過程を解析することによって、安定化要因について以下のような新たな知見を得た。 [1]安定型微小管は、培養5日以降の成熟神経突起の全長にわたって相当数存在する。数本の微小管が束になっている場合も、膜除去後10分程度でほぐれ、30分以上残存する微小管はほとんど単独である。安定型微小管は限られた部位でのみ細胞成分や基質と接着し、大部分は溶液中に浮遊していた(J.Neurosci.Res.,50,81-93,1997)。 [2]露出した微小管をレーザー光照射によって切断すると、ほとんどが断端より両方向に脱重合を開始する。脱重合は、連続的あるいは途中休止をはさんで段階的に進行し、その速度は断端の極性、膜除去から切断までの時間、脱重合パターンに依存して変化した。安定型微小管はゆっくりと断続的に脱重合することが判明した。 [3]カ-ヴした微小管を切断するとはじけてまっすぐになること、脱重合中に特定の場所を過ぎると微小管の曲率や方向が急激に変化することなどから、微小管を基質に固定する特異点の存在が明らかになった。 以上の結果は、微小管が全長にわたって均質に安定化されているのではなく、両端の保護が重要であることを示すとともに、これまで知られていなかった固定点や脱重合休止点など、微小管上の特異点の存在を明らかにした。今後、これらの特異点の分子構成を調べることにより、微小管制御機構の解明につながるものと期待される。
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