ウシ末梢神経ミエリンの糖蛋白質であるP0蛋白質とPAS-II/PMP-22蛋白質には、HNK-1抗体のエピトープ構造である硫酸化グルクロン酸を含有する糖鎖が存在する。神経に特異的に存在する一連の接着糖蛋白質のうちいくつかにおいてもまたHNK-1エピトープが存在することが知られており、接着時における硫酸化グルクロン酸の役割が注目されている。 本研究課題では上記硫酸化グルクロン酸がP0蛋白質とPAS-II/PMP-22蛋白質の接着機能に関与することを明らかにすることにあるが、本年度は種々の動物のP0蛋白質やPAS-II/PMP-22蛋白質に硫酸化グルクロン酸が普遍的に存在するかどうかを検索し、それらの構造を明らかにすることにより両蛋白質の接着機能に必須であろう硫酸化グルクロン酸含有糖鎖構造を解析した。その結果、硫酸化グルクロン酸含有糖鎖はヒト、サル、ウシ、ウサギのP0蛋白質とPAS-II/PMP-22蛋白質においての構造は異なるものの硫酸化グルクロン酸は両者に共通に存在することが明らかとなった。この結果は非還元末端に存在する硫酸化グルクロン酸が両蛋白質の機能にとって必須の構造体であることを示唆する。 P0蛋白質はhomophilicな相互作用をすることが知られているが、この相互作用がP0蛋白質の糖鎖間で起こる可能性についてバイオセンサーをも用いて検討したが、糖鎖間の相互作用は観察されなかった。従って、この相互作用は蛋白質上の糖鎖とポリペプチド部分との作用によるものと推定され、現在この観点から研究を進めている。
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