研究課題/領域番号 |
08458256
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
植村 慶一 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90049792)
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研究分担者 |
戸田 正博 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20217508)
矢崎 貴仁 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (80200484)
岡本 仁 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (40183769)
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キーワード | 神経形態形成 / 再生 / 細胞接着蛋白 / 変異ヘルペスウイルスベクター / L1 / シュワン細胞 / グリア成長因子 |
研究概要 |
1)外来の細胞接着蛋白遺伝子を、ウイルスベクターを用いて、in vitroの神経系細胞に発現する系の確立を試みた。神経親和性をもつ単純ヘルペスウイルスを使用し、細胞毒性の原因となるウイルス複製が感染した宿主細胞内で出来ないように工夫した欠損型HSVベクターを構築した。細胞接着蛋白L1を選択し、ベクターの構築に必要なヘルパーウイルスには、31.5℃でのみ複製する温度感受性変異株HSV-tsKおよび神経系ではリボヌクレオチド還元酵素を発現する腫瘍細胞でのみ複製可能な変異株HSV-G207を用いた。その結果、細胞毒性が低く目的に適した、L1およびアンチセンスL1発現型欠陥型HSVベクターが得られた。このベクターをin vitroで感染させ、L1を過剰発現した初代培養ラットシュワン細胞上では、脊髄後根神経節ニューロンの突起伸展が促進され、アンチセンスL1によりシュワン細胞のL1発現を抑制した系では突起伸展が抑制された。これらの結果はL1が神経細胞の再生に促進効果をもつこと、この欠陥型HSVベクターは神経系の初代培養細胞、組織へ外来蛋白を感染、発現させるベクターとして有用であることを示した。 2)L1のin vivoで神経再生促進効果を確認するため、動物モデルの確立を試みた。成体ラットの胸髄を半切断する脊髄損傷モデルにおいて、損傷部位にa)直接ウイルスベクターを注入する実験、b)胎仔脊髄のホモジェネートにウイルスを感染させ、それを移植する実験、c)末梢神経グラフトを作りそこにウイルスを感染させる実験を計画し、予備実験を行った。 3)シュワン細胞がミエリン形成の前期に起こすアポトーシスは軸索由来のグリア成長因子(GGF)または細胞接着シグナルによって、抑制される。その過程に有効なGGFを同定するため、脊髄後根神経節、大脳、脊髄よりmRNAを抽出し、RT-PCR法によって、GGFのアイソフォームのタイプを解析し、新しいアイソフォームが存在することを示した。
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