研究概要 |
特に神経細胞においてカルシウムイオンは神経伝達物質の放出や神経可塑性に関与している.電位依存性カルシウムチャネルは神経細胞においてカルシウムイオン流入のための主なはたらきをなす事が知られているが,少なくとも数種類が存在するカルシウムチャネルが神経細胞のどの部位に機能的に分布しているかについての知見は限られている. 脳スライスを用いたカルシウムチャネルの研究には,従来ラットが用いられてきたが,遺伝子操作を行ったマウスの機能的解析が重要となってきている現在,マウス神経細胞に関するデータを得ることが重要となってきている.そのため本研究では,まずマウス脳スライスを用いたパッチクランプ測定技術の検討を行い,マウス脳の種々の細胞におけるカルシウム電流の測定およびカルシウムイメージングを試みた.その結果,マウスの神経細胞で得られたデータはほぼラットのデータに相当することが確認された.アダルトの脳をスライスした場合,ラットの場合と同様に,細胞に与えるダメ-ジは大きいが,小脳顆粒細胞のように比較的小さい細胞からの測定は可能であった.ただ幼少マウスの小脳など小部分を取り出してスライスを行うには,技術の改善の必要がある. 一方P/Qタイプのカルシウムチャネルをコードするカルシウムチャネルα1Aサブユニットは,PCRがかかりにくいことでよく知られているが,比較的PCRのかかりやすい条件を見出し,現在,カルシウム電流を確認した神経細胞よりmRNAを取り出し,single PCRを試みている.
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