電位依存性カルシウムチャネルのノックアウトを、P/QタイプおよびNタイプについて行ったが、ノックアウトマウスの作成には至らなかった。カルシウムチャネル遺伝子のノックアウトは、まず相同組換えを起こしたES細胞株を得にくいというばかりでなく、得られたES細胞からキメラマウスを作成する段階でも困難を伴う。これらの問題点がなぜ起こるのかは不明であるが、世界中でまだ電位依存性カルシウムチャネルのノックアウトマウス作成が成功していない現状を鑑みると、カルシウムチャネルに特殊な困難性があるのではないかと考えられる。この間、電位依存性カルシウムチャネルの機能解析を引き続き行い、チャネル活性化の分子機構に関する新しい知見を得た。また電位依存性以外のカルシウムチャネルとして、レセプター活性型のカルシウムチャネルのクローニング・発現および機能解析を進めている。その一つをノックアウトするプロジェクトは、ES細胞の樹立まで達成されており、今後キメラマウスを作成している予定である。さらに、電位依存性カルシウムチャネル自然変異が、マウスにおいて小脳失調を起こす事が明らかとなってきたため、小脳失調マウスのカルシウムチャネルの解析を行った。小脳よりプルキンエ細胞を急性単離し、パッチクランプ法にてカルシウムチャネルの開閉キネティックス、イオン選択性などの検討を詳細に行った。その結果、開閉キネティックス・イオン透過性などに大きな変化は見られないが、チャンネル活性が非常に低下している事が明らかとなってきた。このことは、過剰なカルシウムにより細胞が障害されるという一般的な予想を覆すものであり、現在論文の投稿を準備している。
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