脳高次機能におけるNMDA受容体チャネルの役割

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08458260
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: さき村 建司 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40162325)
• キーワード: グルタミン酸受容体チャネル / NMDA受容体チャネル / 脳高次機能 / シナプス可塑性 / ジーンターゲッティング / 運動障害 / 驚愕反射

研究概要

本研究の目的は、NMDA受容体チャネルが記憶、学習といった脳高次機能にはたす役割を受容体を構成するサブユニットと形成される受容体の機能という面から明らかにすることである。そのために、NMDA受容体チャネルを構成し、その生理的特性を決定しているεサブユニットを欠失したマウスを標的遺伝子組換えにより作成し解析を行なうことを計画した。本年度は、小脳顆粒細胞に高い発現をするε1、2、4、サブユニットと合わせて全てのサブユニットをノックアウトしたマウスを得た。ε3サブユニットのノックアウトマウスの作成に成功した。この結果、既に作成しているε3サブユニット欠損マウスは、予想に反して形態的にも、行動学的にも異常は認められなかった。そこで、ε1とε3サブユニット両者を欠損マウスを作成して検討をおこなった。このマウスでは、軽い運動障害が観察されたが、大きな形態的な異常は認められなかった。小脳を中心とした電気生理学的な解析は現在進めている。また、ε4サブユニット欠損マウスでは、自発運動量の減少を見出し既に報告しているが、新たに音による驚愕反射が亢進していることが明らかにした。また、この亢進は、ε1とε4サブユニット両者を欠損したマウスではより大きくなることも明らかになった。これらの解析を進めることにより、εサブユニットの生理機能を明らかにしていく予定である。

研究成果

• [文献書誌] Kutsuwada,T.: "Impairment of suckling response,trigeminal neuronal pattern formation & hippocampal LTD in NMDA receptor ε2 subunit mutant.." Neuron. 16・2. 333-344 (1996)
• [文献書誌] Nagasawa,M.: "Gene structure and chromosomal localization of the mouse NMDA receptor channel subunits" Molecular Brain Research. 36・1. 1-11 (1996)
• [文献書誌] Takahashi,T.: "Functional correlation of NMDA receptor ε subunits expression with the properties of single-channel & synaptic currents in.." Journal of Neuroscience. 16・14. 4376-4382 (1996)
• [文献書誌] Ito,I.: "Age-dependent reduction of hippocampal LTP in mice lacking N-methyl-D-aspartate receptor ε1 subunit" Neuroscience Letters. 203・1. 69-71 (1996)
• [文献書誌] Ito,I.: "Synapse-selective impairment of NMDA receptor functions in mice lacking NMDA receptor ε1 or ε2 subunit" Journal of Physiology. (in press).
• [文献書誌] Sakimura,K.: "Gene targeting and new developments in neurobiology (Taniguchi Symposia on Brain Sciences No.19)" Japan Scientific Societies Press (Tokyo)/Karger (Basel), 253 (1996)
• [文献書誌] Sakimura,K.: "Molecular neurobiology and brain ischemia" Springer-Verlag (Tokyo), 164 (1996)