研究課題/領域番号 |
08458261
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
川野 仁 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20161341)
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研究分担者 |
竹内 恒成 奈良先端科学技術大学院大学, 助手 (90206946)
大山 恭司 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00255423)
野上 晴雄 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30119838)
川村 光毅 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40048286)
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キーワード | マウス / 全胚培養 / 中脳黒質 / ドーパミンニューロン / 放射状グリア / テネイシン / L1 / チロシン水酸化酵素 |
研究概要 |
これまで、哺乳類では胎仔の外科的手術は極めて困難とされており、発生過程の分子および遺伝子の機能解析に大きな障害となってきた。本研究では全胚培養法によりin vitroで育てたマウス胎仔の脳内に各種神経接着分子に対する特異抗体、あるいは各種転写因子のmRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(アンチセンス)を微量注入して、それらの作用をなくした時に脳の形成過程にどのような異常が生じるかを組織学的に解析し、そこから、当該分子の脳の形成に対する機能的役割を明らかにすることを目的としている。 平成8年度はその前段階として、脳の発生過程を調べ、全胚培養法で実験を行うのに適した部位を選んだ。その結果、嗅球、大脳皮質、海馬、小脳などはその形成時期が遅いため全胚培養に適しておらず、上位および下位脳幹のニューロンの最終分裂、移動、突起伸長の時期がマウス胎仔の全胚培養可能な時期(胎生10日-12日)と一致するように思われた。そこで、ドーパミン合成酵素であるチロシン水酸化酵素をマーカーとして中脳黒質の発生過程を調べたところ、中脳ドーパミンニューロンは中脳基板内側部で胎生10日-12日に最終分裂を終え、最初、放射状グリアに沿って腹側に、ついで他の神経線維に沿って外側に移動、定着して、黒質緻密部を形成することを見いだした。さらに、ドーパミンニューロンの移動過程において、放射状グリアには細胞外基質分子であるテネイシンが、また、外側への移動に関係する神経線維には神経接着分子であるL1がそれぞれ移動の時期に一致して特異的に発現することを発見した。以上の結果は、すでに今年度、出版されている(川野、大山、湯浅、川村、1997)。来年度はいよいよ全胚培養法を用いて胎生10日のマウスをin vitroで数日間生育させ、胎仔脳内にL1に対する抗体を微量注入して、脳に生じた変化を解析する予定である。
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