筆者らは、海馬ニューロンで、大部分のニューロンのAMPA受容体が外向き整流性、Ca^<2+>不透過性であるのに対して、一部のニューロンは内向き整流特性と高いCa^<2+>透過性を示すAMPA受容体(II型受容体)のみをもつことを明らかにし、前者をI型ニューロン、後者をII型ニューロンと呼んだ。本研究の目的は、II型AMPA受容体をもつニューロンの分布とその機能的意義を明らかにすることであった。研究の成果は以下の通りである。1)ラットの海馬および大脳皮質において、II型AMPA受容体を発現するニューロンの分布:海馬では、多数の非錐体ニューロンがII型ニューロンの性質を示したが、内向き整流特性とCa^<2+>透過性がII型ニューロンほど強くない中間型ニューロンも多数存在した。一方、大脳皮質では典型的なII型ニューロンはほとんど存在せず、後頭葉II/III層の小型ニューロンの41%がI型、58%が中間型であった。中間型ニューロンには、Ca^<2+>不透過性およびCa^<2+>透過性AMPA受容体が混在すると考えられた。2)海馬ニューロンのAMPA受容体のサブユニット構成に関する定量的解析:中間型ニューロンが多数存在することから、単一ニューロンレベルでGuluR1-4サブユニットの発現量を定量的に測定する方法が必要になった。このための、競合的逆転写遺伝子増幅法(competitiveRT-PCR法)を確立した。3)II型AMPA受容体のもつ機能的意義に関する研究:ラット海馬および大脳皮質II型ニューロンおよび中間型ニューロンでは、Ca^<2+>透過性AMPA受容体が興奮性シナプス伝達を担う受容体として機能することを明らかにした。4)II型AMPA受容体に対する選択的阻害剤の研究:ポリアミン誘導体である合成女郎蜘蛛毒と1-ナフチルアセチルスペルミンがII型AMPA受容体を選択的に阻害することを明らかにした。
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