研究概要 |
上丘内の局所神経回路の構造を明らかにするために生後3週のラットの上丘の厚さ250μmのスライスを作成し,上丘中間層および視神経層の様々な細胞からwhole-cell patch clamp法による記録を行い,(1)定常電流通電に対する活動電位生成パターンによる細胞の分類とそのパターンの基盤となる各種コンダクタンスの同定.(2)記録後の形態学的解析.(3)アセチルコリンおよびそのagonist,antagonist投与の効果の解析、を行った。 その結果、中間層および、視神経層の細胞は定常電流に対する活動電位の生成パターンにより,7群に分類され,それぞれに特徴的な形態を示すことが明らかになった.特にその一群で,Regularでfrequency adaptationの弱い発火特性を示し,過分極がで内向き整流性のH電流を生じる細胞は視神経層(SO)に存在し,表層(SGS)に広範に樹状突起を派生し,さらにより深い層に軸索側枝を投射し,終末していることから,浅層に入力する視覚情報をより深い層に伝えるのに重要な役割を果していると考えられた.また,上丘中間層の細胞にニコチン30μMを投与するとCurrent clamp記録では強い脱分極と活動電位の生成,Voltage clamp記録では内向き流の生成を生じた.ニコチン応答のIC50は12μMで、Hill係数は1.06だった。そしてこのニコチンによる脱分極作用により,視神経ないしは浅層刺激に体する中間層細胞の応答は著明に促通を受けた.このように上丘中間層におけるニコチン受容体の刺激は上丘内での信号伝達を修飾する作用があることが明らかになった.
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