研究概要 |
ヒトの白内障のモデル動物の開発と評価のため、新たに発見された白内障マウス(CXSD,以下D)に関して行った1年目の研究結果は以下の通りである。 1.組織学的研究により、この白内障の主な特徴は水晶体における空胞形成と水晶体内の物質の硝子体内への崩出であることがわかった。 2.このような白内障の原因になる遺伝子の探索のための交配実験の結果、その原因遺伝子は常染色体上の単一劣性遺伝子であって、第14番染色体と連鎖があることがわかった(Laboratory Animals, Vol.31, 1997)。 3.新たに発見したDマウスの白内障の原因になる新しい遺伝子の名前をlens rupture2と名付けて、その記号1r2にした。この遺伝子はMousu Genome Databaseに登録された(Mouse Genome Database Accession Number : MGD-JNUM-37399)。 4.[(STS X D) F_1XD]マウス140匹を用いて連鎖解析を行った結果、第14番染色体の中心部にあるマイクロサテライト・マーカーD14Mit28と強い連鎖があることが明らかになった。 5.この領域のマイクロサテライト・マーカーの順序はD14Mit113, D14Mit155- (D14Mit28, 1r2) -D14Mit34-D14Mit68であって、白内障遺伝子1r2とD14Mit28との距離は0。7±0。7cMであった(Mammalian Genome,投稿中). 6.さらに、日本産野性マウスであるMSM/Msと白内障マウスとのF2intercross586匹を用い、多くのマイクロサテライト・マーカーを加えて精密な地図が作成された(投稿準備中). 以上のようにlens ruptureを主徴とする白内障の原因遺伝子が1個の劣性遺伝子であり、第14番染色体上のD14Mit28から0.7cMという非常にせまい領域内に存在することが明らかになった。現在はこのようにしてしぼり込まれた白内障遺伝子のクローニングを目指している。
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