研究概要 |
今日の新規抗癌剤の探索は、新規構造、新規作用機序の2点が重要な戦略となっており、癌遺伝子産物の阻害、浸潤転移の阻害、ならびに抗癌剤耐性を克服する薬の探索などが多く研究されている。これらの新しい概念で発見された新薬候補の前臨床試験としては、従来の腫瘍縮小を主眼とした動物実験系に変わる新たな実験動物/動物実験系の開発が必要である。本研究では、(1)ヒト腫瘍が宿主動物内で効率的に浸潤転移する実験動物の開発、(2)同、移植方法の開発、(3)種々の癌遺伝子、癌抑制遺伝子、薬剤耐性遺伝子、ならびに転移に関与する遺伝子発現などの特性の明らかなヒト腫瘍株の整備、以上の3点を総合的に検討することによって、新しい開発戦略での新薬候補の薬効を評価するための動物実験系を開発する。本年度の主な研究成果を以下に述べる。 1.ヌードマウスとSCIDマウスの腫瘍移植の宿主動物としての有用性を比較検討した(Yashimura et al.,Expr.Anim.,1997)。 2.癌遺伝子c-erbB-2/HER2のヒト腫瘍株における発現レベルを検討し、同高発現腫瘍移植SCIDマウス(皮下移植および肺多発腫瘍モデル)を作製した。このモデルを用いたヒト型抗体の薬効評価系を開発した(Tokuda et al.,Br.J.Caner,1996)。 3.臨床材料で発現している微弱なレベルでのP-Gp発現腫瘍の移植モデルを開発し、in vivo実験系での利点を検討した(Abe et al.,Br.J.Cancer,1997,Abe et al.,AntiCancer Res.,1996)。 4.ヒト腫瘍株の遺伝的特性のプロファイリングを行った(Ohnishi et al.,Lab.Anim.,1997)。
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