研究概要 |
癌遺伝子産物の阻害、浸潤転移の阻害、ならびに抗癌剤耐性の克服などの、新しい概念で開発される新薬候補の前臨床試験に適合するような動物実験系を開発することを目的に、ヒト腫瘍が宿主動物内でより増殖/浸潤転移する実験動物や移植方法の開発、種々の癌遺伝子、癌抑制遺伝子、薬剤耐性遺伝子、ならびに転移に関与する遺伝子発現などの特性の明らかなヒト腫瘍株の整備を行った。本年度の主要な研究成果を以下に示す。 1. 血管内皮成長因子(VEGF)のアイソフォームの発現状況を検討し、腫瘍のVEGF189の発現がSCIDマウスへの可移植性の因子であることを明らかにした(Tokunaga et al.,Oncd.Rep.,1998)。さらに、腫瘍細胞のVEGFアイソフォーム189の発現を抑制することによって、腫瘍の造腫瘍性が抑制されることを明らかにした。 2. 上皮成長因子受容体の変異遺伝子に対するリボザイムを作製し、この分子が腫瘍の増殖を抑制することをマウス実験モデルによって明らかにした(Yamazaki et al.,J.Natl.Cancer Inst.,1998)。 3. 宿主マウスの免疫能をかく乱する乳酸脱水素酵素ウイルスのPCR法による検出方法を開発し、腫瘍株中での汚染状況を検討した(Goto et al.,Lab.Anim.Sci.,1998)。 4. GM-CSF受容体を発現するヒト腫瘍がGM-CFS暴露下で増殖亢進することを、ヒトGM-CSFトランスジェニック/免疫不全マウスへの移植において検討した(Oshika et al.,Eur.J.Cancer,1998)。
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