本研究の目的は、固体相と液体相からなる椎間板内部組織(髄核、線維輪)の力学挙動を示す構成法則を提示し、椎間板の力学挙動を計算シミュレーションで推定することである. 1) 固液混相力学による椎間板粘弾性変形シミュレーション:椎間板の粘弾性変形状態を解析するため、有限変形連続体理論に基づいた固液混相力学(Biphasic Thoery)を定式化し、髄核及び線維輪遷移領域の力学モデリング手法を開発した.そして、有限要素法に組込んだ.そのモデル解析により、単純圧縮状態のクリープ変形挙動がシミュレーションされた.本手法の特徴は、通常の粘弾性理論ではなく、生体軟組織の固液状態を考慮した固液混相力学によるもので、計算では液体圧力の時間的緩和と液体の固相への浸透力が考慮されている.計算に使用する材料パラメータは、牛椎間板の実験値と文献値とした. 2) 椎間板髄核組織の動的負荷応答:椎間板内部ゲル状液体の髄核には、適当な内圧が存在する.髄核内の内圧変動が、椎間板の動的負荷応答に対し、どのように関与しているかを調べる実験手法を開発した.試料には牛腰椎から切り出した二椎体一椎間板運動単位を用いた.髄核内圧の測定は、in vivoを想定して、生理食塩水中で行った.本実験では、まず試料に荷重を一定時間負荷し平衡髄核内圧を測定した.そして、その一定内圧の状態で、荷重振幅および周波数をさまざまに変化させて髄核内圧応答と椎間板の巨視的変形応答を測定し、動的剛性値と髄核内圧変動パラメータの関連を明らかにした.本実験は、前年度より継続であるが、今年度実験精度の向上と測定試料数を増加させたことにより、椎間板変形特性に関し有益な結果が多く得られた.
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