研究概要 |
本年度は,(1)日本語のかな文字を音韻的と図形的に処理する実験パラダイムをデザインし,(2)反応時間の計測と,(3)脳磁界計測および脳磁界の電流双極子源と3DMRIとの重ね合わせによる解析を行った. デザインした実験パラダイムは2種類あるが,いずれも,1個の刺激かな文字(プローブ)とそれに先だって呈示される2個のかな文字(サンプル)を照合する課題である.音韻的な処理に関する課題(音韻照合課題)では,サンプルのうちプローブと同じ母音を含む文字を被験者に照合させ,図形的な処理に関する課題(形態照合課題)では,同じ形態的要素(例えば,横棒,縦棒,丸など)を含む文字を照合させた.さらに,プローブやサンプルとして被験者が音読できない文字(アラビア文字など)を呈示し,同じ文字を照合させるシンボルの照合課題を行った. 6名の被験者について上記の課題遂行時の反応時間を計測した.音韻照合と形態照合課題の反応時間(1.0,0.8s)は課題間で差異がないが,シンボル照合課題(0.5s)との比較では,いずれも有意に長かった.反応観察においては,音韻照合と形態照合課題遂行時の脳内活動が,シンボル照合のような単純な課題と比べより複雑であることを示唆する結果が得られた。 同じ6名の被験者の後頭および側頭後部においてプローブに誘発される脳磁界を計測し,電流双極子源の位置推定を行った.推定結果とMRIの重ね合わせにより,後頭葉における双極子源は主に右側頭回と右舌状回/紡錘状回付近に存在することが分かった.また,音韻照合課題ではさらに右頭頂後頭溝や左舌状回/紡錘状回付近に推定され,課題による脳内活動の差異が示唆された.
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