研究課題/領域番号 |
08458282
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
医用生体工学・生体材料学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安斉 順一 東北大学, 薬学部, 教授 (40159520)
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研究分担者 |
前原 和平 福島県立医科大学, 医学部, 助教授 (90181817)
柏木 良友 東北大学, 薬学部, 助手 (50204384)
鈴木 厳 東北大学, 薬学部, 講師 (30226493)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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キーワード | 複合膜 / 累積膜 / バイオセンサー / 白金電極 / 酵素膜 / ビオチン / アビジン |
研究概要 |
バイオセンサーを医療分野へ応用する際に、測定対象となる血液中に共存する妨害物質の影響を低減して高選択的に目的物質を測定することは重要な課題である。本研究では、主に血液中の乳酸濃度を測定するバイオセンサーに焦点をしぼり、センサーによる測定に対する血液中のビタミンC(別名;アスコルビン酸)による妨害を低減ないしは完全に除去することを検討した。この目的を達成するために、乳酸酸化酵素(LO_X)とアスコルビン酸酸化酵素(AO_X)の2種類の酵素を電極上に同時に固定化した複合酵素膜を用いる方法を採用することとした。複合酵素膜を作製するために、アビジンとビオチン標識酵素を交互に固定化する交互累積膜法を実施した。この方法では、アビジンとビオチンとの強固な結合のため、これらのタンパク質がほぼ単分子層を形成して累積固定化されることが判明した。本法により作製した酵素薄膜の構造を重量法や分光法により明らかにすることができた。 はじめに、LO_Xを電極上に同時に固定化して乳酸センサーとする際の、それぞれの酵素の固定化量と固定化順序の最適化を実施した。アスコルビン酸は電極により直接酸化され易いため、LO_Xだけを固定化したセンサーでは、約0.1mM(血中正常値)のアスコルビン酸が共存すると著しい妨害電流(約20%)が観察された。この結果より、LO_Xだけを固定化したセンサーでは血液中の乳酸濃度を正確に測定することは不可能であることが判明した。一方、AO_Xを同時に固定化するとアスコルビン酸がAO_Xにより分解されるため、乳酸濃度が0.1mM以上の範囲では0.1mMのAO_Xによりほとんど妨害を受けなかった。固定化するAO_Xの量はLO_Xの1/10程度で充分であったが、AO_Xの安定性が元来かなり低いことを考慮すると、LO_XとAO_Xを1:1として固定化するのが現実的であると判断される。また、電極上へのLO_XとAO_Xの固定化順序をかえて、種々の乳酸センサーを作製したが、性能に著しい差異は見られなかった。いずれの複合酵素膜で修飾した乳酸センサーでも、血液中の正常値の乳酸を正確に測定することが可能である。 本研究では、酵素を固定化するに際してアビジン・ビオチン法を採用してきたが、アビジン以外にもストレブトアビジンや脱糖鎖アビジンも使用することができることが判明した。また、レクチンと糖鎖との特異結合を利用して、コンカナバリンAとマンノース標識酵素を用いてLO_XとAO_Xの複合酵素膜を作製することも可能であった。本法は、多様な複合酵素膜を作製するための汎用的方法として有用であることが明らかになった。
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