機能回復がプラトーに達している、11名の慢性期脳卒中片麻痺患者(Brunstromのステージ:3〜5)に治療的電気刺激(Therapeutic Electrical Stimulation:TES)を行った。電気刺激には、2チャンネルの携帯型電気刺激装置であるOG技研社製PULSECURE-PRO KR-7を用いた。これまでの経皮的埋め込み電極を用いたTESでは、抗重力筋として大殿筋と大腿四頭筋を、尖足防止に前脛骨筋と腓骨筋群を交互に電気刺激し効果を上げていた。また、1回15分の電気刺激治療を1日6回行っていた。そこで、このプロトコルを参考に、2組の電極を大腿前面と総腓骨神経走行部(腓骨頭〜下腿前面上部)に貼付し、主として大腿直筋と前脛骨筋、腓骨筋群が刺激されるようにした。パルス幅0.3ms、刺激周波数30Hz、連続通電時間15秒でふたつのチャンネルを交互に電気刺激し、1回の治療を15分間として、午前と午後の1日2回行った。治療前を含め、4週間ごとに12週にわたって評価を行った。評価項目は、自動的および他動的関節可動域(足関節、膝関節、股関節、SLR)、歩行速度、歩数、2次元画像動作解析装置(応用計測研究所社製Quick MAG)による歩容の解析、Brunstromのステージ変化とした。短下肢装具使用患者については、装具装着時の歩行についても同様な評価を行った。結果、11名の患者の全例に歩行速度の改善が認められた。また、SLR関節可動域については、自動的および他動的ともに7例において改善が認められた。さらに、1例については、Brunstromのステージにも改善が認められた。以上より、表面電極を用いた治療的電気刺激は、機能回復がプラトーに達している慢性期の脳卒中片麻痺患者の歩行の改善にも効果があることが判明した。
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