研究概要 |
HIV-1を捕捉し系外へ除去することを目的として,レクチンを表面に固定化した超微粒子(ナノスフェア)を作成し,これとHIV-1のgp120との相互作用について検討した。我々はこれまでに,ポリエチレングリコール(PEG)末端に二重結合を導入した重合性モノマーと疎水性モノマーを共重合すると,表面にPEG鎖を持つナノスフェアが生成することを見出している。ナノスフェアは水中での分散性が高く、凝集・沈殿を起こさないことから,薬物担体や酵素,抗体などの固定化担体として用いることができる。そこで本研究では,まずカルボキシル基を表面に有するナノスフェア(直径400nm)の合成を行い,その後表面にHIV-1に対し強い親和性を示すレクチン(コンカナバリンA)を固定化した。レクチンの固定化は水溶性カルボジイミドを用い,ナノスフェア表面とレクチン間にアミド結合を形成させることで行った。合成されたナノスフェアは0.5mg/mlの濃度において,培養液中に存在するgp120の97%を捕捉した。またウイルスの感染価も,対照の23%に減少した。この捕捉能はナノスフェアの濃度に依存していた。一方、レクチンを固定化していないナノスフェアには,このような作用は認められなかった。Con A以外のマンノース結合性レクチンをナノスフェアに固定化した場合も,強いHIV-1捕捉能が確認できた。マンノースの添加により,ナノスフェアのHIV-1捕捉能は濃度依存性に阻害された。しかし,ガラクトース結合性レクチンを固定した場合には,ナノスフェアの捕捉能は弱かった。以上のことから,マンノース結合性レクチン固定化ナノスフェアは,強力かつ選択的なHIV-1捕捉能を有することが分かった。マンノース結合性レクチン固定化ナノスフェアの性質をさらに検討し改良することにより,同物質はHIV-1感染予防薬や診断薬,さらにはウイルス除去剤として応用できると考えられた。
|