研究概要 |
我々これまでの研究で,メタクリル酸マクロモノマーとスチレン鎖をグラフト共重合させて合成した直径約400nmの超微粒子(ナノスフェア)の表面に,HIV-1gp120の糖鎖に対して親和性を示すレクチン,特にconcanavalin Aを固定化したもの(Con A-NS)を作成し,これがHIV-1粒子とgp120を効率よく捕捉することを明らかにした.そこで今年度の研究では改良したCon A-NSを用いて,HIV-1の捕捉効率や異なるウイルス株に対する作用などについて,さらに検討を加えた。その結果,改良されたCon A-NS(直径400nm,Con A固定化量0.91μg/cm^2)は2および0.5mg/mlの濃度において,室温60分のインキュベーション後にHIV-1(III_B株)の感染価を,それぞれ>3.3および2.2log減少させた。またCon A-NSは2mg/mlにおいて,III_BおよびHE株のgp120量を,それぞれ対照の<7.1および5.5%にまで減少させることが分かった。75nmの孔径を有するウイルスろ過膜とConA-NSによる処理との組み合わせでは,ろ過膜が除去出来ないvirion-freeのgp120も取り除けることを確認した。さらに電子顕微鏡により,直径約100nmのHIV-1の粒子がCon A-NSの表面にtrapされている様子が観察された。以上の結果から,Con A-NSは新しいHIV-1感染予防薬として,臨床応用出来る可能性を有すると考えられた。
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