介護機器は専門家の手を離れて使用されるから、安全で快適に使えるよう家庭機器なみの配慮が必要である。物理的安全性については製造側で考慮されているが、思いがけぬ使い方に対する安全性の配慮が必要である。いっぽう性能は充分な機器が、不安、不愉快であるとして拒否される話を聞く。非専門家であり機器に親和感を持たない高齢者を想定し、なお受け入れられる機器を設計する必要がある。代表的な移動・移乗・移載機器について、福祉機器事故情報から事例を引き出し検討した。心理面の問題は苦情等には現れにくいので、具体的な機器の構造に基づいて一般的な考察を行った。特別養護施設やウェルフェア・テクノハウスなどについて実情を調査した。また不安感について簡単な実験的検討を行った。 事例には製造側の注意事項を守らないための事故、あるいはが操作上のパニック状態が多いが、ユーザの不注意として片付けるべきでない。フ-ルプル-フ設計として、指針を与えることができる。不安感については転落など危険の予想、自分の状態の把握、過度の振動など環境条件、視界と介護者とのコミュニケーションなどの項目が指摘される。また一般的な事項として、介護者への気兼ね、介護されることの恥じらい、逆に自力で移動する喜びなどが指摘される。結果としてハードウェアには思いがけぬ事態への対処、心理面では安心感と楽しさという要素を入れた設計指針を提起する。
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