研究概要 |
本研究では,光の量子的性質として必然的に生じる雑音を制御し,標準量子限界以下の雑音をもつ非古典的光(スクイズド光)を発生させる光源の開発と,それを用いた分光研究を目指した実験研究を行った.以下に各々の研究経過と得られた成果の概略を記す. 1. 波長可変スクイズド光源の開発:外部共振器型第二高調波発生(SHG)による光子数スクイズド光源を製作し,その特性を評価した.入力基本波として全固体構成Nd:YVO_4レーザー励起の単一周波数Ti:sapphireレーザを,非線形結晶として温度位相整合KNbO_3を用いることで430nm付近において波長可変かつ高効率なSHG発生と光子数スクイジングを観測した.観測されたスクイジング量(基本波入力300mW 第二高調波出力95mW周波数20MHzで最大0.2dB程度)を理論解析から評価し,それが妥当な値であることを確認した.この値は,同じ方法を用いたスクイジングとして従来報告されている値よりもかなり小さいが,その相違については今後原因を究明する必要がある.また,光パラメトリック発振器を用いた直交位相スクイズド光源についても継続して研究を進めている. 2. スクイズド光を用いた分光研究に用いるための半導体量子ドットの光学的性質:主としてI-VII族化合物半導体であるCuCl量子ドットおよびII-VI族化合物半導体であるZnCdSe量子ドットについて,スクイズド光をはじめとする非古典光を用いた分光実験を視野に入れ,まずこれらの物質における単一量子ドット分光を実現した.これらの個々の量子ドットからの発光が時間的に点滅する現象を見出した他,これらの半導体量子ドットにおける励起子の挙動,緩和過程に関する研究を行った.
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