研究概要 |
浅部構造に対する地震探査法の適用性の検証と活断層探査とをかねて,能代衝上断層と北由利衝上断層の延長線上の八郎潟干拓地を主対象域として,昨年度に引き続き地震探査実験を行った.以下に,おもな研究内容について記す. 1.八郎潟干拓地における実験.昨年度P波探査実験(I側線)における風雨のため記録不良部分を補うため,約1km区間再測すると共に,これと平行に約300m離れた農道(側線II)でも類似のP波探査を新たに実施した.SH波についても昨年度分の改善と拡張のため,側線長約500mの探査をした.これらの実験は夏季になされた.秋季には地下構造解釈の補助として,主にI側線で,直接貫入による地盤探査のほか比抵抗探査と重力探査を実施した. 2.補足的実験.雄和町の特設実験場で,EWG,ドロップヒッタ,カケヤの3種の打撃型振源について,特性比較のための孔中観測実験を実施した.また,干拓地とは条件の異なる段丘上で,ドロップヒッタ振源によるP波探査実験をし,深さ300mほどまで比較的高分解能で探査しうることを確認した. 3.解析処理.P波記録初動部の低周波の波に着目して屈折法解析を施した.これで得た静補正量により,反射記録断面を改善した.結局深さ約400m以深には断層らしい大きな変位があるが,それ以浅の地層は傾斜も少なく変位に乏しい.干拓地最表層つまり旧湖底ヘドロ層の厚さをSH波反射記録と直接貫入とにより確認し,波動解釈に資した.これに基づいてP波記録からSV波反射波を抽出した.SV波とSH波の反射断面はかなりよく一致する.そこでは深さ40〜60mほどに落差1〜4mの断層らしい変位が認められる.しかし,P波断面の約400m以浅では有意な変位(検出限界約10m)が見られないことから,この「断層」は大きな累積的断層活動によってもたらされたものとは認められない.
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