研究概要 |
昨年度,ウスイタボヤ(Botryllus schlosseri)において,allo群体の感作を受けた血球に特異的に,またはより多く発現しているmRNAのcDNA Libraryをサブトラクション法を用いて作成し,23種の有効なcDNAを得た.本年度はこれら遺伝子の組織内での発現を調べるためにin situハイブリダイゼーション法を確立した.そして,得られた23の遺伝子のうち,既知のものはBotryllus schlosseriのヒートショックタンパク質HSP70.1,HSP70.2とshortconsensus repeatsのみであり,その他ではほ乳類の免疫関連遺伝子に類似性を持つものが6つあることが明らかとなった.これら免疫関連遺伝子のcDNAの中から,ほ乳類のMHCIIIにリンクしたヒートショックタンパク質HSP70に非常に高い類似性を持つ遺伝子で,既知のB.schlosseri HSP70.1とHSP70.2の遺伝子とは異なる遺伝子が見つかった.これまでに推定全長約3kbのうち900base程が判明し、この配列はMHCIII関連HSP70(Human HSP70.1,Hunt and Morimoto,1985)に塩基配列で77%,アミノ酸配列で83%の相同性があった.また,in situハイブリダイゼーションの結果,一部の血球種のみに特異的に発現するcytoplasmicactinホモログ遺伝子など,血球のみに発現が見られる遺伝子も発見された. さらに,rDNAの配列からイタボヤ類の系統進化を調べた結果,allorecognitionにおける拒絶反応様式の多様性から推論された系統進化とほぼ一致することが明らかになった.また,AFLP analysisを用いて癒合性遺伝子付近のgenetic mapの作成を試み,まだ,low resolutionであるがmapを作成した.
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