研究概要 |
我々は先ず、多重双晶粒子(MTP)を成長させるための真空装置を作製した。これを用いて、球形のガラス容器を350°Cに加熱し、この表面に最初にNaClを1500A蒸着した。この表面にさらにAu(〜100A)とNaCl(〜1000A)を交互に蒸着し、NaCl蒸着膜中に埋め込まれたAu粒子を作製した。この容器にチオール水溶液(今回はメルカプトプロピオン酸を使用、濃度は10^<13>mol/1)を注ぎ込み、NaClを溶かし、MTPの表面にチオールを化学吸着させ、イガ栗状またはウニ構造状の分子集合体を作製することに成功し、これを「MTPナノミセル」と名付けた。 この様にして作製したMTPナノミセルの水溶液を電子顕微鏡のメッシュ上に滴下し、乾燥させて透過電子顕微鏡(TEM)、透過電子回折及び走査電子顕微鏡で解析し、殆どのAu粒子がMTPナノミセルになっていることを確認した。その平均の大きさは約70Aであった。TEMで観察する際に電子線を強くすると複数のAu粒子が、強い電子線に照射されている場所に向かって移動し、3〜5分後にはMTPナノミセル同士が融合する現象を発見した。またMTPナノミセル水溶液をSi(111)表面に滴下し全反射角X線分光(TRAXS)で元素分析を行い、AuとSを検出しMTPナノミセル構造を確認した。このMTPナノミセルを電子分光(UPS,MIES)により研究し、カルボキシル基が外側に張り出していることからチオールがAuのMTPに化学的に結合していることを確認した。また核磁気共鳴(NMR)による研究も行った。またこのMTPナノミセルは、金属塗布剤、カラムクロマトグラフィ、触媒、デバイス、化粧品などに使用できることを指摘した。
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