本研究は、現有装置、飛行時間分析多点検出器(TOF)系および2基の一次元位置感応型検出器を用いた結晶分光器(PSD)系の、中性子波長分解能とその強度両面での性能向上に必要な実験装置の開発研究である。TOF系では特殊デイスクチョッパによる中性子バースト時間幅の短縮化およびPSD系では従来の黒鉛単結晶に替わる高分解能彎曲集光式Si単結晶モノクロメータの設置である。 1.TOF系:中性子通過率、全測定系波長分解能最適化シュミレーション後、設計・製作して高速回転試験を終了・完成した。平成8年11月中旬、京大炉スーパーミラー中性子導管実験室に設置・特性試験を経て共同利用実験に供された。 (1)性能結果: (1)-1:中性子波長分解能、強度の定量化:それぞれ、2.5倍および3.3倍向上したことを確認した。従って、総合的な性能は、約8倍改善された(標準試料・黒鉛単結晶による特性試験)。 (1)-2:α/γ多相鋼、SiCw/Alなど、従来測定した試料による測定を行い、各結晶格子面(hkl)反射ピークが明瞭に分離・観測された。供試材中有効体積(Gauge Volume)全体に平均化された格子面間隔の相対ひずみ量測定が10^<-3>〜10^<-4>領域にわたって可能になった。 2.PSD系:使用したSi(311)単結晶は、結晶厚さ3または4mm各1枚、さらに4mm2枚であり、標準試料α-Fe(211)ピークについて回折計の性能を調べた。その結果、回折条件の最適化により回折ビームの平行化が得られた。また、ビームの集光度がNeutron Imaging Plate法を用いて可視化できてその特性が明瞭に観測できた。中性子絶対強度がAu-foil放射化法で確認された。 (2)性能結果: (2)-1:αFe(211)回折ビーム平行化時のFWHMは11.4'であって予測値とよく一致した。 (2)-2:従来の黒鉛単結晶モノクロメータに比べて、中性子強度および角度分解能が、それぞれ、10および5倍以上向上した。 現在、集光が水平方向に加えて、垂直方向についても可能になる湾曲機構の開発を進めている。
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