研究概要 |
ナイロン6を主成分とし,これにエステル結合を有する共成分高分子を,約10wt%ブレンドし,前者の加水分解に及ぼす後者の影響について検討した.methyl acrylate/acrylamideの仕込比を1/3,1/1,3/1(mole%)として,共重合組成の異なる3種のpoly(methyl acrylate-ran-acrylamide)(PMA)を合成した.一方poly(ε-amino caprolactum-co-lactide)(PCL)はナイロン6(Mn:2.2X10^4)75wt%とポリ乳酸(Mn:3X10^5)25wt%の混合物を260°Cに保った二軸押出機内で酢酸亜鉛を触媒としてアミド・エステル交換反応させることにより調製した.90部のナイロン6と,10部のPMAまたはPCLとを,小型ニーダー中で溶融混合し,240℃のホットプレス中で圧縮成形することにより,厚さ約0.2mmのシートとした.冷却後幅4mm長さ50mmの短冊状の試片を切出し加水分解に供した.60°Cに保ったpH7のリン酸緩衝溶液中に,これらの試片を所定時間浸漬した.浴比は40とした.浸漬開始後1週間毎に浸漬液の吸光度の変化を紫外・可視分光光度計で測定するとともに,試片のメタクレゾール希薄溶液の粘度測定により,少量の共成分を含むナイロン6の加水分解の進行を測定した.加水分解され,浸漬液中に溶出した低分子量成分中にカルボニル基による吸収が,波長λ=230nm近辺に認められた.PMAをブレンドした試片では,カルボニル基による吸光度は浸漬時間の経過と共に単調に増大した.しかし,共重合組成による差は殆ど認められなかった.PCLを10wt%ブレンドした試片についても,同程度の効果が認められた.緩衝液に浸漬する前後の,希薄メタクレゾール溶液の粘度を比較することにより,分子量の変化について検討した.ナイロン6そのものでは,その低下速度は極めて小さく,70日間浸漬により,約18%の粘度低下が起こっていたが,PMAおよびPCLを10wt%含む試片の粘度は,3週間後には60%,5週間後50%以下まで低下し,10週間を経過すると初期値の20〜30%まで低下した.
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