研究概要 |
富栄養化した湖水の現地調査の結果,植物の生育に必要な無機栄養素を含んでいることが分かったが,一般の養液栽培で用いられている培養液の濃度と比べるとその濃度はきわめて低い.そこで,このような低い栄養濃度の養液を用いて花卉類を正常に生育させる養液栽培法について,岡山大学農学部内の実験圃場において詳細に検討し,次のような結果を得た. 1.湖岸据えつけ型栽培装置におけるかけ流し液の流速とスプレーギクおよびレタスの生育の関係を調査した.養液(NO_3-N:2.5-5.0ppm)の流速が0-9.0cm/secの範囲では,流速が早くなるにつれて養分吸収速度が速くなりよく生長した.しかし,流速18.3cm/secでは9.0cm/secの場合より生育が劣った. 2.湖面回遊型栽培装置を想定した植物体の移動速度とスプレーギクおよびレタスの生長の関係を明らかにした.低濃度養液(NO_3-N:5.0ppm)の場合は,移動速度が0,1.5,3.0,6.0cm/secと速くなるにつれて生長速度が速くなった.また,この実験の中で得られた知見として,高濃度養液(NO_3-N:60.5ppm)では,移動速度が速い(6.0cm/sec)と生育が著しく阻害され,枯死する個体もあった. 3.児島湖南側約4分の1の湖面を15カ所に区分けし,1996年4月〜11月の間毎月湖水の分析調査を行った結果,各無機要素の平均濃度は次のような範囲で推移していた.NO_3-N:5.31-0.11,NH_4-N:0.02-0.28,P:0.66-3.57,K:8.65-17.10,Ca:27.04-33.80,Mg:8.91-28.90,Fe:0.03-0.88,Na:52.73-241.9各ppm. 4.湖面回遊型の動力源として使用する太陽電池の性能を詳細に調査したところ,太陽電池(サンヨ-AMP-1815)1枚当たりの出力は,日射量が十分にあるとき,最大約24Wであり,太陽エネルギから電力への変換効率は約8.4%であった。
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