研究課題/領域番号 |
08459022
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
西中川 駿 鹿児島大学, 農学部, 教授 (70041639)
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研究分担者 |
松本 光春 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (30157383)
上村 俊雄 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (40136833)
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キーワード | イノシシ / ブタ / 起源系統 / 骨格 / 動物遺体 / 骨計測 / 装飾品 / 儀礼 |
研究概要 |
本研究はイノシシとブタの起源系統ならびに古代人のブタの飼育などを明らかにするために、本年度は以下の調査を行った。 1.まず、前年度に計測を行った現生の福岡県産、大分県産、鹿児島県本土および奄美大島産のイノシシのデータを整理し、比較同定のための基礎として、遺跡出土のものと比較検討を行った。大きさにおいて、縄文のイノシシは大型であることがわかった。 2.イノシシの生息の北限とされる青森県畑内遺跡出土の骨を八戸縄文学習館で調査し、また、早稲田大学金子氏所蔵の各地域のイノシシの骨を調査した。さらに、九州で最大の出土骨を誇る熊本県黒橋貝塚のイノシシについて計測学的に調査した。いずれも縄文遺跡であり、ブタの形質は全くなく、イノシシのものと同定された。 3.東京国立博物館、佐倉市国立歴史民俗博物館、千葉市加曽利貝塚博物館においてイノシシに関する考古資料を調査した。前二者においては古墳時代の装飾付き須恵器や埴輪にイノシシを象った事例を観察したが、豊猟を願って、神に祈りをささげた祭祀品と考えられる。加曽利貝塚博物館では、企画展示で展示されていた鹿児島県の草原貝塚・市来貝塚・麦ノ浦貝塚、熊本県の阿高貝塚・黒橋貝塚出土の資料を調査した。猪牙製の釣針・刺突具や猪の犬歯を利用した垂飾品などがある。猪の多くの頭蓋骨が割断されており、脳髄食が推察される。阿高貝塚ではイノシシ形土製品が出土しており、縄文人の精神生活の一端を示すものであろう。これらの事例から、猪は原始・古代の人々と深い関わりがあったことが知られる。
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