研究課題/領域番号 |
08459022
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
西中川 駿 鹿児島大学, 農学部, 教授 (70041639)
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研究分担者 |
松元 光春 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (30157383)
上村 俊雄 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (40136833)
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キーワード | イノシシ / ブタ / 起源系統 / 頭蓋 / 出土骨 / 骨計測 / 土製品 / 儀礼 |
研究概要 |
本研究はイノシシとブタの起源系統を明らかにするために、本年度は以下の調査を行った。 1. 出土骨同定の基礎資料を得るために、まず、福岡県産イノシシ雄119例、雌112例を用い、林らの方法で年齢を8 classに分類し、頭蓋68部位を計測し、年齢別比較や成長曲線、各計測部位から最大長、最大幅の推定式を作成した。 2. 福岡、大分、鹿児島、奄美大島および国立科学博物館所蔵の神奈川、山梨、長野、鳥取、兵庫、長崎、宮崎の各県産の48ヵ月齢以上の雄61例、雌51例の頭蓋52部位について計測を行い、主成分分析を行った。雄は雌に比べすべての地域で大きく、形状が異なることを示した。また、地域別では神奈川、長野、山梨県産が大きく、次に九州、兵庫のもので、奄美大島産のイノシシは大きさや形状において、他の地域のものと全く異なっていた。 3. 遺跡出土骨については、いわき市の大畑貝塚(縄文中期)、岡山市南方遺跡(弥生中期)、垂水市柊原貝塚(縄文中、後期)などの調査を行ったが、大畑、柊原貝塚のものはブタの形質は全くなく、イノシシのものと同定された。また、南方遺跡のものはすでにブタとして報告されているが、DNAによる検討を要すると思われる。なお、研究協力者の名古屋大学の小澤氏は、アジア各地の野生イノシシと家畜ブタのミトコンドリアDNAを調べ、すでに遺伝学的特性を明かにしているが、唐津市菜畑遺跡のものはブタと断定するにはいたらなかったという。 4. 縄文時代後期、晩期になると、イノシシを模した動物形土製品が多く出土するようになる。その分布は北海道から近畿地方にみられているが、その中心は東北地方にあり、北海道日ノ浜遺跡、宮城県沼津遺跡、青森県十腰内遺跡などがその代表的な事例である。動物形土製品は、狩猟に際しての祭祀的道具として宗教的儀礼に供せられたのであろう。
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