本研究は、高圧によるグラファイトの構造の変化をグラファイトの持つ状態密度によるラマンバンドを利用して解明しようとするものである。ダイヤモンドアンビル装置におけるラマン測定において問題となるのは、ピーク強度が非常に大きいダイヤモンドの1332cm^<-1>バンドである。このバンドはグラファイトのE_<2g>モードによる1581cm^<-1>のバンドや状態密度に起因する1355cm^<-1>のバンドの検出の障害となる。そのため、この1332cm^<-1>バンドから離れた位置に現れるグラファイトのラマンバンドを用いて研究を進める方法が考えられる。そこで、1355および1581cm^<-1>バンド以外のモードのラマンバンドを検出できるような高いS/N測定が可能なダイヤモンドアンビル高圧装置対応ラマン測定装置を構成するとともに、この装置の可能性について検討を行った。さらに、本研究に利用できるグラファイトのラマンバンドについて検討を進めた。本年度で得られた結果をまとめると次のようになる。(1)出力3W、波長514.5nmのレーザ光を励起光とし、ダイヤモンドアンビルによる平行平面収差が補正された対物レンズを使用した顕微鏡ラマン測定系を構成した。(2)ダイヤモンドアンビルによって挟まれたグラファイト試料に上記出力のレーザ光を照射しても、試料および光学測定系に損傷は生じないことが確認された。(3)上記のような出力のレーザ光を用いることによって、ダイヤモンドアンビル高圧装置において問題となるダイヤモンドの1332cm^<-1>バンドの影響を受けない高次モードのバンドあるいは低波数側のバンドの測定が可能であることが確かめられた。(4)高いS/N測定によって、810cm^<-1>よりもさらに低波数側に新しいバンドを見出した。
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