研究課題/領域番号 |
08459027
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研究機関 | 宮城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
池田 千里 宮城工業高等専門学校, 材料工学科, 教授 (60109832)
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研究分担者 |
山本 誠一 宮城工業高等専門学校, 材料工学科, 助手 (70280328)
田口 收 宮城工業高等専門学校, 材料工学科, 教授 (30042253)
鯨井 千佐登 宮城工業高等専門学校, 総合科学系, 教授 (80149905)
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キーワード | 古代製鉄炉 / 東北地方 / 鉄文化 / 古代遺跡 / 考古学 / 鉄滓 / 鍛接 / 刃物 |
研究概要 |
平成9年度は、実験計画に沿って以下の研究を遂行し、一部は学術誌等で公表した。 1.奈良〜平安時代にかけての、東北地方の鉄生産の代表的な遺跡として、青森県の杢沢、宮城県柏木、福島県武井の各遺跡に着目し、現地での文献調査や出土資料収集も行った。 2.古代からの日本周辺地域との交流の歴史の中で、朝鮮半島からの影響、特に伽耶地方の古代製鉄遺跡遺構の研究がここ1、2年高まってきている。そこで、現地に赴き、立地条件の調査と考古文献資料収集と現地研究者との討論を行い、東北への鉄文化や製鉄技術の移入の可否を探った。確証を得るまでには至らないが、製鉄原料の砂鉄と鉄鉱石、木炭原料の樹木種などの相異はあっても、日本の東北地方にかなりの影響を与えている事象が少なからず感じられた。特に、伽耶や慶州地方の遺構出土品での、馬具、農耕具、祭祀のための鉄への執着は、武具、貨幣を主体とする律令体制の流れとは別に、日本海に沿った流れが、意外に速やかに津軽に及んだ理由として、よく窺われた。 3.上記1、の遺構の製鉄関連出土の鉄滓について、地理的・歴史的特徴をふまえ、化学成分関係、顕微鏡組織など、材料工学的見地から、比較・検討を行った。その結果、各地域での製鉄技術や炉内反応の共通点、相違点を明らかにすることができた。すなわち、鉄かんらん石の存在は、鉄収率(鉄鉱石が金属鉄になる率)は大幅に低減させていること、酸化チタンも、スラグに移行するときにウルボスピネル(Fe_2TiO_4)やイルメナイト(FeTiO_3)などを形成し、これらの化合物の形態と分布の相異に関連性があること、などが明らかになった。さらに、出土層位が異なる鉄滓組織の比較によって、酸化チタンの含有量の比較ができ、たたら製鉄の操業レベルが時代とともに向上していること、が確認できた。
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