研究概要 |
まず,初年度として,防災地理情報システムへの基礎情報の入力を行った.すなわち,三重県を対象として,東海から南海地震の既発表の断層パラメターを用い,モデル断層を決定した.そして,地質条件,地盤条件,地下水位分布,ボーリングデータなどの数値データを防災地理情報システムに取り込んだ.つぎに,東南海地震を対象として三重県の対象海域の津波伝播計算と詳細氾濫解析地点の抽出を行った.そこでは,水深10mでの浅海域における広域津波の計算を実施した.さらに,各地域において,過去の津波災害が激甚であったところを抽出し,その地形を数値地図化するとともに,防潮堤や河川堤防の天端高情報を入力した.これらの情報を得て,有限要素法の適用が可能となった.一部は大阪湾に適用し,河川網が複雑な大阪市内域においても良好な精度が確保できることがわかった.さらに,危機管理項目の整理と一般化を試みた.すなわち,まず,阪神・淡路大震災の教訓を整理した.とくに,都市直下型地震災害のみにしか適用できない教訓を,一般化するため,すでに近畿地方の地域防災計画の見直しの作業で公開されているマルチ・シナリオ型の被害想定を前提として検討し,教訓の階層性を明らかにした.人的被害の予測法については,とくにこれまでほとんど明らかでなかった鉄道被害,道路被害によるものを定量化し,これを大阪の上町断層地震と東京の関東地震に適用した.これと同時に,阪神・淡路大震災の建物被害(全壊及び半壊)と死亡率の関係を詳細に検討し,新しい関係式を提案することができた.
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