研究概要 |
都市地震防災の課題を危機管理の観点から検討し,つぎのような成果を得た.1)大規模都市地震による人的被害の,時間的,季節的変化を考慮した予測法を提案した.:都市生活者の時間的な行動の変化や季節的な変化を導入し,屋内在宅率や就寝時の行動能力低下率などを考慮して,阪神・淡路大震災における人的被害データを基礎に置いた死者・負傷者数の予測式を提案した.対象とした被災種類は,家屋の倒壊,火災(延焼を含む),鉄道事故,高速道路事故,土砂災害及びブロック塀の倒壊や落下物による災害である.その結果,阪神・淡路大震災が発生した午前5時46分は早朝故に被災者が少なくて幸運だったというのは誤りで,1日の犠牲者数としては夕方6時頃と匹敵して,犠牲者が多いことを見いだした.この成果を大阪府の上町断層による地震(想定マグニチュード7.2)に適用したところ,最大死者数がおよそ2万人であることがわかった.2)防災情報システムの標準化と実用性向上の重要性を指摘した.:巨大災害の場合,自治体単独で対処できなくなる場合があり,その場合には近隣自治間で防災情報システムの互換性が重要であるが,それがほとんど考慮されておらず,その標準化を進めなければならないことを指摘した.また,防災地理情報システム(GIS)において,基本的な要求事項が明らかにされずに,行政側の多様な要求をすべて処理できるような仕様は問題があることを述べた.なぜなら,このシステムは単純で汎用性がなければ,自治体職員の多くが使いこなせず,また多様な能力は実際に活かされない恐れが大きいからである.
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