研究概要 |
スピン偏極した短寿命核からの非対称ベータ崩壊を利用する核磁気共鳴(NMR)法に多重高周波磁場印加による核スピンの人工的操作を導入し新核四重極共鳴法(非対称β崩壊指標)の実用化を計った。 1)高エネルギー入射核破砕過程に反跳核選別を組み合わせ、偏極不安定核を生成する最適条件を、^8B,^9C,^<12>N,^<13>O,^<20,21>F,^<27>Si,^<39>Caに関する実験から系統的に探った。また、低エネルギー核反応を利用した核スピン偏極法の確立のため、^<20>F,^90,^8Liの核偏極の反応角やエネルギー依存性を測定し反応機構を解明した。 2)核四重極相互作用の下では、NMRの共鳴線は核スピンの2倍に当たる本数に分離し効果が急激に減少する。これらの共鳴線に同時に高周波磁場を印加し、効率を上げられるが、この核四重極共鳴法に速い断熱通過(AFP)の方法を導入し、核スピンの人工的操作法開発に成功した。これにより核スピンの完全反転を実現し、任意の核スピン操作が可能になった。この実現のため、四重極結合定数が大きい場合にも強い高周波磁場を印加する必要から、真空コンデンサーのスイッチングによる高速同調システムを開発した。この方法を、核スピンI=1の^<12>B,I=3/2の^<13>O,^<23>Mg,^<39>Ca,I=2の^8B,I=5/2の^<19>O,^<21>F,^<27>Si,I=7/2の^<41>Scに適用し、これらの核の四重極モーメントを決定し、TiO_2,MgF_2等の結晶中の電場勾配決定を行った。 3)このために必要なAl_2O_3やTiO_2等の結晶内電場勾配の理論的予言のため、KKR法を用いた第一原理による電子バンド計算を行った。 4)この方法をさらに発展させ、これまでに低核スピンで確立している核スピン偏極と整列の間の相互変換をスピンの大きな核に適用することに成功した。即ち、^8B,^<120>F,^<41>Scの核スピン整列生成に成功し、ベータ線の角度分布の整列相関項を観測した。
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