研究概要 |
本年度はほぼ予定どうり(1)^3He融解圧温度計(MCT)素子の設計と試作,(2)測定系の整備を行った.また,熱緩和時間の定量的な検討の結果,目的とする温度・磁場範囲の全域で十分な熱的追従性が期待できることも判明した. 1)極低温・高磁場用MCT素子の設計と試作 銀微粒子を焼結した熱交換器の形状と微粒子の粒径の最適化を,液体^3Heと焼結銀との間の界面熱抵抗(磁場依存性も考慮),焼結銀自身の熱抵抗,焼結銀中の液体^3Heの熱抵抗の三つで形成される梯子抵抗の合成熱抵抗を最小化するように行った.こうして得た合成熱抵抗の値とMCT素子中の液体および固体^3Heの熱容量の実験値を使ってMCTの熱緩和時間を計算した結果,T【greater than or equal】20mK,B【less than or equal】8Tの温度・磁場範囲で10sec以下であることが分かった.また,圧力計ダイアフラムをはじめとする素子の構成部品には高純度銀や銀合金を採用し,試料以外の容量型歪み圧力計自身の磁場変化や熱容量を最小限にするよう材料選択を行った.こうした設計に基づいて実際のMCT素子を製作し,現在は組立ての最終段階にある. 2)測定計の整備 本実験では最大磁場13Tの超伝導マグネットの中心にMCTを1台,補償コインと超伝導磁気シールドで実現するゼロ磁場空間にMCTを2台置いて,ゼロ磁場中の二つのMCTの温度を比較することにより磁場内の微小な残留温度差を定量的にモニターする方式を採用した.それぞれのMCTの温度差をできるだけ小さくするためのU字形の高熱伝導銀熱リンクを設計し,現在,その機械工作中である.完成次第,残留抵抗比を上昇させるべく微量酵素雰囲気中でアニールする予定である.
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