本研究では、最近著しい技術的な進展を見せている光導波路型非線形素子により、光ファイバー内で連続的にツインビームを発生させ、ツインビームのもつ非古典的な性質を明らかにし、このファイバー内ツインビームを実用化することを目指した。 従来、ツインビーム発生はバルク非線形結晶を用いたパラメトリック過程により行われていた。このため、 (1) ツインビームの空間的な広がりによる量子相関の悪化を避けることができない (2) 光路の調整などに超絶的な技巧が必要とされ取り扱いが煩雑 などの理由により、実用化しようとする動きは全くなかった。 本研究では、光導波路型非線形素子を用い、二本の光ファイバー中にツインビームを発生させることで、これらの困難を一気に解決することを目的とした。結論から述べると、研究期間内で当初予定した成果を達成することはできなかった。一番の原因は、ある程度予想していたことではあるが、検出器の問題である。当初は量子効率の高い検出器でツインビームの持つ量子的な性質を明らかにする目論見であったが、それには新しい検出器の開発という壁があり、それを乗り越えるには時間が足りなかった。しかし、ツインビームの実用化のためのいくつかの基礎実験を行い、ツインビームを効率的に発生させるための道筋は切り開くことができた。今後は、検出器製作を含めた形で研究を続け、ツインビームの実用化を目指す。 このファイバー内ツインビームが実用化した場合、スクイーズド光による標準量子限界以下の通信、盗聴できない暗号通信など、これからの科学技術、特に光通信の分野に大きく貢献するはずである。
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