研究概要 |
電界放出型電子源を用いることにより冷たい電子を試料にあて、試料の分子構造を破壊しないと共に、4重極分析器の第2安定領域を使用することにより質量分解能の良い質量分析計を開発することを目標に昨年度から開発に入った。 1.昨年製作した試験用チェンバーにおいて、電子ビームの実験を開始した。電子ビームを収束させる為には円筒電子レンズを用いる必要がある。レンズの径、与える電圧などによりレンズの収束の特性は変化するが、実際に多数のレンズを製作する事は無駄であるので、この設計の最適化のためポアソン方程式を有限要素法にて解くプログラムをフォートランにて開発した。これを用いて電子レンズを製作し、これにまずバリウムスティフネイテッドカソードから発生する電子ビームを入射し、収束させる実験を行った。最終的な電界放出型電子源を用いるまでには至らなかったが、来年度において最終的な構成で実験を行う準備が整った。 2.第2安定領域を用いる四重極質量分析管の新しい制御方法を実証するため製作した試験回路は昨年度発振を起こし、安定に動作させる事が出来なかった。本年度はこの原因を解明し、安定に回路が動作するようになった。昨年度の問題点は高周波領域における回路のグラウンドの取り回しにあった事が判明した。この試験回路を用いて走査線の精度,安定度,及び直線性を確認した。さらに4重極分析器のセンサーヘッドを真空チェンバーに実装し、これと試験回路を接続して第2安定領域における動作を確認した。
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