研究課題
基盤研究(A)
色をプローヴとした幅広いクロモトロピズム現象を示す新規錯体を合成開発することを目的として本研究を計画した。クロモトロピズム(物質を取り巻く化学的、物理的条件変化に応じて、その物質が可逆的に色変化する現象を総称するもの)には、その起源に応じて、Solvatochromism(solvent).Thermochromism(temperature).Piezochromism(pressure).Photochromism(light).Electrochromism(electron-redox reaction)等がある。これらの現象を示す錯体は、立体的にも、あるいは電子的にも興味ある特製を持つことが明らかとなった。たとえば、通常、平面構造をとりえない弱い配位子場を持つ混合配位子錯体が、立体効果によって平面錯体を形成することがある。これが溶液内で、溶媒の配位した八面体錯体と本来の平面錯体の平衡混合物を作り出す。したがって、溶媒の配位能に依存して、平面錯体と八面体錯体の比率が変化し大きな色変化が見られる(ソルバトクロミズム)。さらに、中間の配位能力のある溶媒中で、この溶液を冷却するとほとんど八面体錯体となり、加熱、高温にすると溶媒は配位圏からはずれ平面錯体となる(サーモクロミズム)。エレクトロクロミズムについては、表示素子材料の観点から興味あるもので、可逆的な酸化還元系を開発し、それらの両端の色変化が顕著なものを探索するということになるが、この系の開発はまだ成功していない。鎖状ジアミンとテトラケトンを含む複核混合配位子錯体の合成とクロモトロピズムの研究において、分子内のCH-π相互作用が弱いながらも認められた。現在研究継続している新しい系は、テトラアミンを架橋配位子とする混合錯体の合成である。すでに銅-複核錯体の合成に成功しているが、これについては、1999年春年会(日本化学会)で報告する。希土類高次混合配位子錯体の合成とその構造特性、d-f混合金属系のいくつかの興味ある結果も共同研究者たちと合成した。スピンクロスオーバ錯体 の合成も試み、鉄(II).(III)錯体について、溶液内および固体でのスピン転移について検討した。
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