低磁場ESR緩和時間の測定

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08554027
• 応募区分: 試験
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 池田 龍一 筑波大学, 化学系, 教授 (90022631)
• 研究分担者: 石丸 臣一 筑波大学, 化学系, 助手 (10251034)
• キーワード: 電子一核二重共鳴 / ESR / NMR / ハロゲン架橋錯体 / 常磁性スピン / スピンソリトン

研究概要

2価と4価の混合原子価状態からなるハロゲン架橋一次元錯体において、微量の常磁性3価サイトが鎖上に形成され、この不対電子がソリトンを形成して鎖上を高速拡散することが予想されている。我々はプロトン磁気緩和の測定を行い、この電子スピン拡散の存在を明らかにしてきた。
しかし、より直接的にスピンの移動を証明するためには、電子スピン緩和時間の周波数依存性の測定、及び、電子一核二重共鳴の測定が不可欠である。本研究では、これらの実験を可能にするための新しい測定装置の開発研究を目的にしている。研究計画申請時には、上記の二つの装置開発を目標にしたが、研究費の都合により研究方法を一部変更し、後半の二重共鳴装置のみの設計と製作に着手した。
この装置は強いマイクロ波を天使スピン系に加えて電子スピン共鳴信号を飽和させながら、核スピンの共鳴信号を観測することを目的としている。マイクロ波回路は、日本電子株式会社のENDOR装置製作部門の技術者と設計、製作について詳細な打ち合わせを何度も行い、その結果、ENDOR分光器のマイクロ波発振器を基本モデルにして、本研究に適するよう新たな設計を行ってキャビティー部分の製作を行うことに決定した。マイクロ波源は、経費を節約するための、現有のESR分光器のマイクロ波発振器を利用して、その出力を新たに設置する増幅器で10W程度まで増幅することによって解決した。NMR信号検出系も現有のパルスNMR分光器を利用し、ラジオ波コイルと同調回路を自作してキャビティーに取り付ける方針である。本年度中にマイクロ波回路部分は完成する予定で、現在、日本電子の開発研究部門において最後の調整が行われており、本年3月末に納入予定である。

研究成果

• [文献書誌] H.Ishida: "Phase Transitions and Ionic Motions in Solid Trimethylethylammonium Iodide Studied by ^1H and ^<127>INMR,Electrical Conductivity,X-Ray Diffraction,and Thermal Analysis" Ber Bunsenges.Phys.Chem.100. 433-439 (1996)
• [文献書誌] Y.Sakiyama: "Differential Scanning Calorimetry Studies on Structural Phase Transitions in (C_nH_<2n+1>NH_3)_2ZnX_4 Crystals (n=1-5,X=Br or Cl)" J.Phys. : Condens.Matter. 8. 5345-5353 (1996)
• [文献書誌] H.Honda: "^<15>N and ^<133>Cs Solid NMR Studies on Ionic Dynamics in Plastic CsNO_2" Z.Naturforsch.51a. 761-768 (1996)
• [文献書誌] M.Tansho: "^<31>P NMR Investigation of a Ringing Gel Phase and Adjacent Phases" Colloids and Surfaces B,Biointerfaces. 7. 281-286 (1996)
• [文献書誌] H.Ono: "Ionic Motions and Phase Transitions in Solid Trimetylammonium Tetrafluoroborate Studied by ^1H.^<19>F and ^<14>N NMR,Powder X-ray Diffraction,and Differntial Scanning Calorimetry" Ber.Bunsenges.Phys.Chem.100. 1833-1838 (1996)
• [文献書誌] T.Shimizu: "New Rotator Phase Revealed in di-n-alkylammonium Bromides Studied by Solid-State NMR,Powder XRD.electrical Conductivity and Thermal Measurements" J.Chem.Soc.Faraday Trans.93. 321-326 (1997)