研究概要 |
1.燃焼管の設計、試作、燃料探索 発注先の都合で完成が遅れたが、漸く出来上がり現在据えつけ、試験中である。来年度には使用できる見込みである。従って燃料探索は今年度中には行うことが出来なかったが、主として天然起源不飽和植物油、モノテルペン類などを購入した。 2.フラーレン生成機構に関する理論計算 アーク放電、レーザー剥離などと違って1000度C以下の温度で速やかにフラーレンが生成する機構の見当をつけるために素反応の一つであるStone-Wales転移を調べた。これが有機化学的には珍しいオレフィン-カルベン転移であることはすぐに解ったが、最低活性化エネルギーの計算値が120kcal/molを切らないことが問題となった。そこで、寿命が非常に長い三重項励起状態のままでSW転移が完結すると考え、SAM1・RHF近似開殻電子構造配置間相互作用計算を行って、活性化エネルギー計算値を約70kcal/molまで引き下げるのに成功した。 3.半自然起源フラーレンの探索と分析 燃焼管が到着するまでの時間を利用して身の回りにある煤製品を有機溶媒抽出してC60、C70のHPLC分析を行った。分析精度としてlngという高い感度を達成した。墨、木炭、活性炭などの中にC60,C70が0.1ppmのオーダーで含まれているという興味深い事実を見いだしたが、中でも大阪ガス製繊維状活性炭にはppmオーダーと格段に多くのC60が存在する事を見いだした。この製品は石油ピッチ起源の無定型炭素を熱処理して製造されていることから、熱処理段階とフラーレン含有量の関係を追跡することによって、低温フラーレン生成条件が見いだされる可能性が高い。来年度はこの関係を詳しく調べる計画である。また、墨中のC60含量が時間と共に一次反応速度式に従って現象することを見出した。これは高密度固体媒体中の球形非極性分子のブラウン運動型移動という珍しい現象ではないかと考えられ、鋭意検討中である。
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