本研究では植物における高温検知る機構の解明および遺伝子組み換えによる高温耐性植物の作出を目的として、通常の植物の生育温度(10〜30℃)で変性し、かつ熱ショックタンパク質と相互作用するタンパク質を検索し、それらの遺伝子をラン藻に導入して、通常の生育温度で熱ショックタンパク質を大量に発現する形質転換体を作製することによって、植物における高温耐性の改変の可能性を敢闘した。このために(1)一般的な細菌よりも低い温度で生育する好冷性生物であるハプト藻およびVibrio sp.Strain ABE-1のタンパク質における熱耐性、(2)好冷性生物であるハプト藻およびVibrio sp.Strain ABE-1における熱ショックタンパク質の遺伝子クローニング、および(3)熱ショックタンパク質の遺伝子導入によるラン藻の高温耐性の改変を行った。 好冷性生物から合計6種類の遺伝子を単離し、塩基配列から推定されたアミノ酸配列によってタンパク質を同定した。これらの中でハプト藻のribosomal proteinは既知のタンパク質と一致するアミノ酸が少なく、低温で変性する可能性がある。またVibriosp.Strain ABE-1の熱ショックタンパク質GroELの遺伝子をクローニングした結果、他の生物のGroELとほぼ同様のアミノ酸が保存されていること、およびプロモータ領域に類似の塩基配列が存在することから、好冷性生物も他の生物と同様に高温ストレスに対する応答を示すと推定される。一方ラン藻に大量発現用プラスミドを利用して高等植物の低分子量熱ショックタンパク質を発現させた結果、野生株では耐えることのできない48℃の高温処理に対する生存の確率が上昇し、遺伝子導入によるラン藻における高温耐性の改変の可能性が明らかになった。
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