研究課題/領域番号 |
08555003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前田 康二 東京大学, 工学系研究科, 教授 (10107443)
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研究分担者 |
長村 俊彦 (株)ユニソク, 科学機器開発研究所, 所長
目良 裕 東京大学, 工学系研究科, 助手 (40219960)
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キーワード | DLTS / 顕微鏡 / 非接触 / 表面光起電力 / 深い準位 / STM / 過渡応答 / ナノ |
研究概要 |
表面光起電力(SPV)の過渡応答を走査トンネル顕微鏡(STM)を使って検出することにより、ナノメートルスケールの空間分解能でかつ非接触的にDeep Level Transient Spectroscopy(DLTS)測定を行える新しい装置-走査トンネルDLTS顕微鏡-を試作することを目的として、今年度は以下のことを行った。 (1)熱ドリフト・熱シフトフリーSTMステージの試作 熱ドリフトを防ぐため、STM探針走査系ユニットを一定温度に保つべく温度可変試料ステージとの熱絶縁を良くし、熱シフトを防ぐため、試料ステージから伸びた3本のアームを走査ユニットに固定した3本の不動ピンに常に接触するよう保つ方式の新しいSTMステージを考案・試作した。試作ステージを超高真空STMに組み込み、HOPGをテスト試料に用いて、性能を評価したところ、熱ドリフトについてはほぼ満足すべき結果を得た。しかし、試料ステージの構成部品の勘合が完全でないことが原因と推定される熱シフトが認められ、現在これを改良中である。 (2)SPVの過度応答検出法の確立 光照射に伴うトンネル電流の過度変化には、SPV以外の原因によるものがあり、これを回避して測定を行う必要がある。最も深刻な問題である光照射による試料(及び探針)の熱膨張・収縮効果を定量的に調べるため、SPVの発生しないHOPGを参照試料にしてGaAs試料で測定を行った。トンネル電流振幅の光断続周波数依存性から、熱膨張・収縮の緩和時間は数十msであり、これより充分短い時間スケールのトンネル電流変化はSPVの過度応答によるものであることを明らかにした。探針-試料間に適当なバイアス電圧をかけることによって、通常の状態では表面バンドベンディングが存在しないGaAs(110)劈開面でもSPVを誘起できることも同時に確認できた。以上の結果から、電流フィードバックの時定数は1s程度であるので、1msより短い時間の過渡応答を測定すれば良いことが分かった。このため、従来の電流プリアンプの帯域を1桁以上広げた広帯域利得(100kH,10^8V/A)の電流プリアンプを試作した。測定の高速化により、測定時間の短縮と熱ドリフトの回避というメリットも得られた。
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