平成8年度は、試料から放出される2次電子のスピン偏極度を測定するためのスピン偏極検出器を製作した。スピン偏極検出器には、高エネルギーモット検出器、阻止型モット検出器、低速電子回折検出器、散漫散乱検出器、吸収電流検出器等があるが、装置の製作が容易で低廉な低速電子回折検出器を採用した。本年度に購入した位置検出装置を別途製作した真空フランジに支柱を立てて取り付けた。次に、同フランジに用意した高圧用電流・電圧導入ターミナルを介して電気的にフランジ外と接続した。さらに、フランジ全体を既存の小型超高真空装置の中に取り付けた。最後に、電流・電圧導入ターミナルと位置検出装置電源を電気的に接続した。 超高真空装置を大気から封じて、これに真空ポンプ、真空系等を取り付けた。そして、装置全体を焼きだしを行いながら排気し、装置内部を超高真空にした。この状態で位置検出装置を動作可能状態にし、放電や破損なく正常にこれが動作することを確認した。 次に、この小型超高真空装置を取り付けるべき既存の大型超高真空装置の改造に着手した。まず、試料から放出される2次電子がスピン偏極検出器に導入される際に、軌道が曲がらないようにするために装置内部全体を覆う厚さ2mmの磁気遮蔽板の設計を行った。また、試料を保持し、これを入射電子ビームに対して平行移動、回転ができる様な試料保持装置の設計を行った。次年度にかけて、設計に基づいて実際の製作を進めていく予定である。
|