研究概要 |
シリコン単結晶を用い、低次の対称反射を利用すれば、10meVていどのバンド幅のX線が得られる。数meV〜1meVのバンド幅は高次の非対称反射の結晶板を(+,+)配置あるいは(+,-,-,+)配置にすれば得られる。この方法によっってサブmeVを達成しようとすると、非対称度を大きくする必要があり、結晶の照射面積は広くなる。この場合結晶に広い領域にわたって高い完全性が要求されるが、現在入手可能なFZシリコン結晶ではかなり限界に近い。そこで結晶の小さな領域だけ用いるファブリー・ペロ-型のモノクロメーターの開発研究をおこなった。これは2枚の結晶板を正対させたもので、その表面が回折面である。ブラッグ角90°近傍で垂直入反射を起こさせると、結晶板間にX線定在波が形成される条件のとき、透過波は狭いバンド幅を持つ。 本研究ではファブリー・ペロ-型モノクロメーターを実現させるため、まず1枚の薄板結晶でのブラッグ角90°近傍における反射・透過特性を調べた。実験結果はダ-ウイン流の動力学的回折理論にもとづく計算とよく一致した。つぎにファブリー・ペロ-型モノクロメーターについて詳細なシミュレーションをおこなったところ、厚さ200μmのシリコン結晶板を600μmの間隔で正対させ、波長0.67887A^^・のX線で(0016)反射を起こさせれば、バンド幅が0.09meVまで狭くなることが分かった。実験的にはエネルギー分解用にSi888反射で非対称度b_1=0.040,b_2=25の2つの結晶板を(+,+)配置にすることにより0.7meVの分解能をもつものを作製し、ファブリー・ペロ-型モノクロメーターの動作特性を調べた。いまのところ所期の結果は得られていないが、ファブリー・ペロ-型モノクロメーターの加工、ゴニオメーターの微小角回転などの精度的な改良により新型のモノクロメーターは実現するものと期待している。
|