研究概要 |
聴力検査用イヤホンを新たに開発した場合,その標準等価最小可聴値を心理音響学的実験により測定しなくてはならず,大規模な実験設備と多大な労力および時間が必要である.そこで,我々は物理的測定のみによる標準等価最小可聴値の決定方法を開発することを考え,本研究を進めてきた. 本年度は,以下について研究を実施した. (a)実耳内音圧測定用マイクロホンの製作 耳内音圧を計測するためのマイクロホンシステムを製作した.補聴器用小型マイクロホンにバネ線を取り付け,外耳道に保持できるようにした. (b)最小可聴値測定実験システムの構築 聴覚心理実験システムを導入したため,それを用いて最小可聴値を測定するシステムを構築した.まず,測定システムの個々のモジュールの特性測定を実施し,精度を確認した.次に,ブラケッティング法(極限法)による最小可聴値測定のプログラムを作成した. (c)各種イヤホン装着時の実耳内音圧と生体音の測定 イヤホンを装着した状態で,安静時の耳内音圧レベルを測定した.音圧の測定には(a)で製作したマイクロホンを用いて測定した.その結果,ヘッドバンド圧力の強いイヤホンでは,100Hz以下の雑音が大きいことがわかった. (d)ヘッドホンバンド圧力をパラメタとした最小可聴値の測定 (c)より生体雑音の多くはヘッドバンドの圧力に関係すると考え,ヘッドホンバンドの圧力をパラメタとして最小可聴値を測定した.その結果、ヘッドバンドの圧力を変えても最小可聴値はわらなかった.しかし,被験者は「ヘッドバンド圧力が強い場合に,大きな血流音が聞こえた」と報告しており,なぜ,血流音の影響が最小可聴値に現れなかったか検討する必要がある.
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